Япония: цивилизация, культура, язык 2022

«ISSUES OF JAPANOLOGY, vol. 9» St-Petersburg State Univ 2022 533 現在、多くの人々は住居を内陸の高台に移動し、沿岸 部は大津波以前より一層高い防潮堤を築造し、公園にす るなど復興事業に取り組んでいる。住民が移転した場合、 かつての地で形成されていたコ ミュニティーや祭事など は失われ、語り継がれてきた地域の歴史や文化も失われ る恐れがある。このままでは地域の貴重な文化遺産の一 つともいえる「水神(龍神)」信仰は忘れ去られ、先人 の貴重な教訓すら葬り去られることになるという問題意 識が提起されることとなった。 2015 年〜 2016 年の活動報告では、これまでの「水神(龍 神)」信仰の調査を通して、地域における「水文化の継承」 がされている地域とまもなく途絶えてしまうことが危惧 される地域があることが判明している。 調査活動の結果、(1)東日本大震災は「水神(龍 神)」信仰の喪失過程に拍車をかけてしまったことが分 かった。都市部においては震災前にも住宅開発に伴い 転々と所在を変えている人々や、過去には雨乞いの場所 であったところが、現在は水が流れていないものなどが 散見された。震災により沿岸部では、物理的に破壊され 再建の見通しのつかない区域もある。 ( 2 )「水神(龍神)」信仰は「祀り・祭」を中心に維持 されることから地域コミュニティーにおける「拠り所」と しての役割を有しており、災害からの復興シンボル的役 割として再建に取り組んでいるところもあった。 ( 3 )地域の伝承に誇りを持ち、 調べ、 記録して、 次 世代への伝承に注力している人が多くの「水神(龍神)」 信仰のある周辺に住んでいることも判明した。 先祖代々 守ってきた「守人」 や近所の住民からの聞取りを行うこと により、「水神(龍神)」信仰と地域の人々との関わりを 知ることができた。

RkJQdWJsaXNoZXIy MzQwMDk=