Япония: цивилизация, культура, язык 2024

«ISSUES OF JAPANOLOGY, vol. 10» St-Petersburg State Univ 2024 207 何度も所属する国が替わったサハリンとそこに住む先住 民族は、まさにその犠牲者である。その節理自身を覆す 意欲を示すブロニスワフの造形は植民地主義や帝国主義 を批判的にみつめ、植民地化された人々やその土地に対 する支配や搾取の影響を告発する、ポスト・コロニアリ ズムを体現した存在そのものだと考えられる。 また、もう一人の主人公ヤヨマネクフは、アイヌを滅ぼす 力とは生存競争ではなく、外部の攻撃でもなく、「アイヌ のままであってはいけないという観念だ」 12 と気付く。彼 はアイヌとして誇り高く生きることを貫くために日本の 南極観測船に犬ぞり担当として乗り込む。そのヤヨマネ クフの心情を、川越宗一は次のように記す。 死に絶えるか " 立派な日本人 " なんてのに溶かされち まう前に、島のアイヌとして生きられる故郷を作る んだ アイヌがアイヌとして誇りをもって行動することで、 アイヌの精神の故郷が現出するはずであることをヤヨマ ネクフを通して語るのである。 4.「熱源」の意味の変容 『熱源』における「熱」の意味は生きることへの情熱 を掻き立てるものから、「生きて行くこと」そのものに変 容を遂げている。 生きるための熱の源は、人だ。 人によって生じ、遺され、継がれていく。それが熱 だ 13 。 このように「熱源」は「人が生きていくこと」に意味 が転化しているのである。 12 『熱源』 p.343. 13 『熱源』 p.371.

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