Япония: цивилизация, культура, язык 2024

«ISSUES OF JAPANOLOGY, vol. 10» St-Petersburg State Univ 2024 209 がある」(中略)「黙って見てろ。あたしたちは滅び ない。生きようと思う限り、滅びないんだ」 15 このように、戦時下に於いても人が生きている限りで きることはあるはずであり、人々が平和に共存できる希 望は存在するという思いを表明している。『熱源』におけ る「熱」は、「情熱」や「生きるエネルギー」という意味 合いから、より根本的な、人として「生きること」に焦 点を集めて小説は終わっている。 5.結論 このように、かつての流刑イメージや先住民の滅亡イ メージを払拭し、「生きる情熱」や人が「生きていくこと」 を喚起させる場所としてサハリンを描いたのは、日本文 学の中ではこの川越宗一の『熱源』が初めてではないか と考える。ポスト・コロニアリズム小説であると同時に、 新しいイメージのサハリンを描いた小説として注目に値 する。そして、今後どのようにサハリン・イメージが変 容を遂げるのかも注視していきたい。 【主要参考文献】 アントン・チェーホフ『サハリン島』原卓郎訳、中央公論 新社、 2009 年 . 川村湊。昭和文学とアジア 「樺太」、「樺太文学論」 『昭和文学研究』 25 号、 1992 年 . 山辺安之助(著)、金田一京介(編集)『あいぬ物語』 新版、青土社、 2021 年 . 沢田和彦『ブロニスワフ・ピウスツキ伝 〈アイヌ王〉と 呼ばれたポーランド人』 2019 年 . 須田茂『近現代アイヌ文学史論』寿郎社、 2018 年 . 15 『熱源』 p.422.

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