Япония: цивилизация, культура, язык 2024

«ISSUES OF JAPANOLOGY, vol. 10» St-Petersburg State Univ 2024 47 「広い」どちらの語釈にも「もの / 物体」「空間」「面積」 という語が共通しており、使い分けのはっきりした違い を見て取るのは難しい。 このような微妙な使い分けに関する十分な回答が国語 辞典で得られないことに関して森田良行は、国語辞典は 「用法上の問題や関連する他の語との対比の上で意味の 違いや発想の違いを取り上げていないから」 27 だとしてい る。森田は自身の辞典を認知言語学的なものとは言って いないが、「ことばというものは話し手の主体的な行為で あるから、話し手(時には聞き手も含めて)の立場・視 点というものが特に問題になる。それは時に、その語を 用いるときの基準の置き所となる」 28 とし、森田が認知言 語学的観点から語彙を見ていたことがわかる。また、山 や車、人、話者の視線の起点を表す目のイラストなどを 駆使したわかりやすい図解もこの辞書の特徴である。 では、森田の基礎日本語辞書を見てみよう。「大きい」 の基本義は「標準や比較の対象より体積・面積・高さ・数 ・程度・規模などが上回る状態」 29 とされ、前述の国広の 両立性のような使用範囲の広さや(体積の)視覚的判断 による属性描写であることに森田は注目している。一方、 「広い」は程度判断の属性描写で二次元の量(面積)を 指すのが基本義とされ、三次元・一次元の表現でも基本 的に平面的な広がりを感覚で捉えた表現であるとしてい る。「大きい」と「広い」の使い分けについては「宇宙」 を例に挙げ「客観的」「主観的」という表現を用いている 30 。 27 森田良行『基礎日本語辞典』東京 : 角川書店 , 1989. P.1. 28 森田良行前掲(注 30 ) P.1257. 29 森田良行前掲(注 30 ) P.224-225. 30 森田良行前掲(注 30 ) P.993-994.

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