Япония: цивилизация, культура, язык 2024

«ISSUES OF JAPANOLOGY, vol. 10» St-Petersburg State Univ 2024 51 文の「文字列のまとまり」に焦点を当てるのではなく、 読んだり書いたりする「時間」に焦点を当てた共起表現 を用いる。 国広は「長い」の意義素を<線的な広がりが標準値より 大きい> 34 とし、西尾も「長い」が 1 次元の量を示し、そ の延長は水平や垂直とは無関係であり、直線曲線どちら の量も表すことを指摘している 35 。「長い」は、空間にお ける次元的な用法以外について「時間」を表すことがで きる。小出は、「長い」で表される「時間」は対象を 1 次 元的に延びるものとしてイメージされ、「長い文章」「長 い小説」などは印刷物としての空間的物理的な量ではな く、読むという行為が書かれたものを線的に辿るという 性質を表わしていると述べている 36 。次元形容詞の多義構 造をスキーマやフレームといった枠組みで調査した栗木 は、文章などの言語表現の規模を表す「長い」について、 文章などの言語表現を線的に捉え、文書の始まりと終わ りという 2 点間の距離を焦点化した空間的な距離の長さか らのメトニミーによる拡張と、読んだり話したりするの に時間がかかるという因果関係にもとづくメトニミーに よる拡張の両方が考えられると述べている 37 。 このように、日本語の名詞「作文」を修飾する次元形 容詞は、作文の文字列を前景化し物理的に知覚しやすい 一次元の空間の量と捉えた属性、または、作文を読んだ り書いたりする時間の量に焦点を当てた属性を表す「長 い」が用いられる。つまり、日本語では作文の属性を表 34 国広哲弥前掲(注 15 ) P.158. 35 西尾寅弥前掲(注 12 ) P.70-73. 36 小出慶一「次元形容詞の空間的用法と非空間的用法」『群馬県女子 大学記要 21 』玉村 : 群馬県立女子大学 , 2020. P.11. 37 栗木久美前掲(注 20 ) P.172-174.

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